◇◇ アトピー性皮膚炎のスキンケアとステロイド外用薬について
◇◇ |
1、ステロイド外用薬の薬効、使用法、副作用につて |
ステロイド外用薬についての正しい知識も理解しましょう
ステロイド外用薬の薬効 最大の薬効は抗消炎作用 T細胞の活性化を抑制、マクロファージ・単球などの抗原提示能を抑制、サイトカインの産生を 抑制、肥満細胞の活性化や脱顆粒を抑制、神経細胞に作用し痒みを抑制。 ステロイド外用薬のランク分類は、外用による血管収縮作用により判定する。
ステロイド外用薬の吸収 一般に顔面・頸部・腋窩・外陰部の経皮吸収は高く、手掌・足蹠では経皮吸収は低い。 成人と比較して、幼小児ではステロイド外用薬の吸収が高い。
ステロイド外用薬の剤型 軟膏(油脂性基剤)・クリーム(乳剤性基剤)・ローション・スプレー・テープ剤
ステロイド外用療法 単純塗擦法 ODT療法:サランラップで覆って絆創膏で止め密封する。ステロイドテープ剤もODT療法である。 亜鉛化単軟膏重層塗布法:苔癬化局面や湿潤性局面に有効、軟膏交換時には、オリーブ油を 湿らせたコットンで患部に残った軟膏を拭い取り、石鹸・シャワーで清潔に洗い流した後、上記 の処置を繰り返す。
ステロイド外用薬を使いたくないケース (1).乳児期 (2).感染症合併(伝染性膿痂疹〈とびひ=黄色ブドウ球菌〉、カポジ水痘様発疹症〈疱疹ウイルス 感染〉、伝染性軟属腫〈みずいぼ〉) (3).ステロイド外用薬の副作用と思われる皮膚萎縮や皮膚線条が認められるとき
ステロイド外用薬の副作用 (1).細胞の増殖ないし再生の抑制および線維新生の抑制、免疫抑制によるもの 皮膚萎縮、皮膚萎縮線条、乾皮症または魚鱗癬様変化、感染症(細菌、真菌、ウイルス)の 誘発 (2).膠原繊維の変性や血管壁の脆弱化によるもの ステロイド潮紅、毛細血管拡張 (3).その他 ステロイド外用薬(主剤、基剤、乳化剤、防腐剤、安定剤、抗生物質)の接触性皮膚炎、多毛 (4).全身性副作用 強力なステロイド外用薬を長期間全身に使用した場合に副腎の抑制が生じる。一般的には単 純塗布で1日20g以上、ODT療法で1日10g以上を連用すると副腎機能の抑制が生じるといわ れている。 ただし、strongestのステロイド外用薬では上記の½量が限界とされている。 (5).白内障、緑内障 |
◇◇ からだの部位によるステロイド外用薬の吸収力の違い ◇◇ |
|
|
2、アトピー性皮膚炎でみられる皮膚乾燥について |
1.すべすべした肌 描記は赤色。
2.湿疹続発性の局所性乾燥皮膚 描記は白色、アトピー性皮膚炎の軽微な皮膚病巣である。
3.尋常性魚鱗癬合併に伴う全身性の乾燥皮膚 湿疹病巣以外の皮膚もごく軽度の乾燥皮膚が認められる、描記は赤色。手掌・足蹠に深い皺 が認められる。
4.尋常性魚鱗癬合併に伴う局所性の乾燥皮膚 局所性の乾燥皮膚は湿疹病変のことが多い、描記は白色。局所性の乾燥皮膚の湿疹病変が 発展して全身性に湿疹続発性の乾燥皮膚になる重症例もある。
|
|
3、アトピー性皮膚炎のスキンケア |
1.皮膚を清潔にする 腋窩、膝膕、頸部、背部、臀部などにはアトピー性皮膚炎が好発する。皮膚表面に分泌され た皮脂や表皮由来のたんぱく質などは長時間皮膚表面に放置されると、酸化されたり分解腐 敗して抗原性が増し、本症の悪化の原因になる。皮膚表面に二次的に増加した細菌も悪化 の原因になる。したがって、スキンケアの基本は入浴時には石鹸やシャンプーにて皮膚表面 のさまざまな抗原を十分に洗い流すことである。
2.保湿 アトピー性皮膚炎の人は敏感肌であり、その本態は乾燥肌である。入浴後なるべく早く保湿 剤(ワセリン、ヒルドイドなど)を塗ることである。
3.局限性の乾燥皮膚 湿疹続発性の極限性の乾燥皮膚の基本的な治療はステロイド外用剤である。
4.全身性の皮膚乾燥 尋常性魚鱗癬合併に伴う全身性の皮膚乾燥には保湿剤や入浴剤が奏功する。本群の患者 は10〜11月ごろよりの注意深いスキンケアが大切である。本群のポイントは保湿剤を単独で 使用する点にある。ステロイド外用剤と保湿剤の混合使用は誤りである。ただし、保湿剤によ る接触性皮膚炎には細心の注意が必要である。
5.局限性に湿疹続発性に皮膚乾燥 尋常性魚鱗癬合併に伴い全身性の乾燥肌があり、かつ局限性に湿疹続発性に皮膚乾燥が 生じている湿疹病巣にはステロイド外用剤を積極的に用いかつ十分な角質バリア機能が 改善するまで使用することが重要である。
|
|
4、具体的な治療方針 |
(1).乾燥皮膚には保湿剤を塗る。
(2).ジュクジュクしたところ、赤いところ、かゆみの強いところには1日2回、2群(VS)を塗る。 (ジュクジュクしているところには亜鉛化単軟膏重層塗布法を行う。)
(3).1週間後に症状が5(初診時を10とする)になったら、1日1回入浴後にのみにする。
(4).さらに、1週間後に症状が3になったら、2群(VS)を3群(S)にして入浴後痒いところ、赤み の残っているところだけに塗る。
(5).痒みも、赤みもなくなった段階でステロイド外用藥は中止し、保湿剤のみにする。
(6).何かのきっかけで、再び痒みや赤みが出てきたら、すぐそのとこだけに、弱め(4群)のステロ イド外用藥を塗る。
|
|
5、ステロイド外用剤の使用基準の目安 |
|
|