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1、妊娠から出産まで |
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◇妊娠1ヶ月(卵体期)0〜3週 0.8〜1.6mm 受精から着床、胎盤を形成
◇妊娠2ヶ月(胎芽期:器官形成期)4〜7週 2.5〜2.0cm 外胚葉と内胚葉という2つの細胞層ができ(妊娠4週)、体のいろいろな組織や器官となっていく。
◇妊娠3ヶ月(ここから胎児期)8〜11週、7〜9cm・・約10〜20g:人間らしい形になってくる。
◇妊娠4ヶ月(12〜15週)14〜17cm・約100g:各臓器の基本的な形がほぼ完成。顔のつくりが整ってくる。
◇妊娠5ヶ月(16〜19週)約25cm・約250g。妊娠中期、安定期に入る。聴診器で心音をきくことができる。
◇妊娠6ヶ月(20・21・22・23週)約30cm・約650g(大きさに個人差がでてくる)。
◇妊娠7ヶ月(24〜27週)約35cm・約1000g。超早産:妊娠22週より28週未満の間の分娩。
◇妊娠8ヶ月(28〜31週)約40cm・約1500g。妊娠後期に入る。
◇妊娠9ヶ月(32・33・34・35週)約45cm・約2200g。
◇妊娠10ヶ月(臨月)(36〜39週)約50cm・約3000g。早産:妊娠24週より37週未満の間の分娩 正期産(妊娠37〜41週で生まれる)・満期産ともよぶ。
◇妊娠40週の最初の日が妊娠280日目、出産予定日となる。 (妊娠42週以降の出産は過期産とよぶ)
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2、赤ちゃんの発達 |
◇妊娠1ヶ月(卵体期)0〜3週 0.8〜1.6mm 卵胞が発育開始する(妊娠0週)。成熟し排卵された卵子が受精:受胎ともいう(妊娠2週)すると、受精卵となる。受精卵は倍々に細胞分裂しながら卵管内を移動し、桑実胚で子宮に到達、胞胚のすがたで子宮内膜に着床(妊娠3週)、胎盤を形成しはじめる。
◇妊娠2ヶ月(胎芽期:器官形成期)4〜7週 2.5〜2.0cm 外胚葉と内胚葉という2つの細胞層ができ(妊娠4週)、体のいろいろな組織や器官となっていく。
◇妊娠3ヶ月(ここから胎児期)8〜11週、7〜9cm・約10〜20g:人間らしい形になってくる。 筋肉、骨格のはじまり。顔と首が発達し、黒目がわかる。大脳皮質の神経細胞の生成がはじまる。頭部と体幹部の区別をつけることができる。鼻や口唇(4〜8週)、まぶたができる。心拍動がしっかりしてくる。口蓋が形成される(6〜12週)。9週以降には手足の区別がつき、指が完全に分かれ、耳が形成される。腎臓が機能しはじめる。 人間らしい形になってくる
◇妊娠4ヶ月(12〜15週)14〜17cm・約100g:各臓器の基本的な形がほぼ完成。顔のつくりが整ってくる。 脳が急成長し、神経細胞の髄鞘化がはじまる。間脳や大脳辺縁系が発達してくる。骨格がしっかりしてくる。各臓器の基本的な形がほぼ完成。手足の形、外性器の形もできあがる。顔のつくりが整ってくる。耳たぶができる。 羊水を飲み、おしっこする。
◇妊娠5ヶ月(16〜19週)約25cm・約250g。妊娠中期、安定期に入る。聴診器で心音をきくことができる。 視神経が発達し、眼球運動みられる。骨格や筋肉が発達し、活発に動く。内耳の蝸牛が完成、海馬も成長しはじめる。爪や髪の毛やまつげ、まゆ毛が生える。腎臓と膀胱がほぼ完成する。指しゃぶりがはじまる。
◇妊娠6ヶ月(20・21・22・23週)約30cm・約650g(大きさに個人差がでてくる) 大脳皮質の神経細胞の生成が終了する。聴神経が発達し、聴覚野と結びつく。 内性器(卵巣や精巣)がホルモンを分泌しはじめる。口すぼめ、まぶた開閉。眠ったりしゃっくりをしたりする。 羊水量が増え、よく動き回転する。肺・皮膚・消化器などは、まだ正常に機能していない。 髪の毛、まゆ毛、まつげなどがはっきりしてくる。永久歯のもとがつくられる。
◇妊娠7ヶ月(24〜27週)約35cm・約1000g。超早産:妊娠22週より28週未満の間の分娩 聴覚が発達し外界の音が聞こえるようになる(ABRで測定も可能)。味覚・嗅覚もじょじょに発達。 鼻の穴が開通。光の明暗を敏感に感じるようになる。手を開いたり閉じたりする。体の向きを変える。 羊水を飲み、腸には胎便がたまる。20分間隔で睡眠と覚醒をくりかえすリズムがついてくる。
◇妊娠8ヶ月(28〜31週)約40cm・約1500g。妊娠後期に入る。 内臓器官や中枢神経が、かなり発達してくる。聴覚機能はほぼ完成する。皮下脂肪も増えてくる。 肺の発育は不十分。呼吸様運動がみられる。
◇妊娠9ヶ月(32・33・34・35週)約45cm・約2200g 性器の完成、肺機能の成熟度が増す。ほとんどの胎児は、頭位(頭を下にした)の姿勢となる。 34週(約2000g)頃には、心肺機能がほぼ完成する。
◇妊娠10ヶ月(臨月)(36〜39週)約50cm・約3000g。早産:妊娠24週より37週未満の間の分娩。 子宮外での生活に対応する準備が整う。膵臓が完成(36週)。口の周囲の筋肉も発達する。 正期産(妊娠37〜41週で生まれる)・満期産ともよぶ。
◇妊娠40週の最初の日が妊娠280日目、出産予定日となる。(妊娠42週以降の出産は過期産とよぶ) 新生児:生後4週間(28日間)の赤ちゃんをいう。 |
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3、流産の予防と治療について【1〜5】 |
流産について |
100人の女性が妊娠したとすると、
そのうち約12〜20人が流産します。年齢的には20歳だと12人程度、30歳台の後半で20人を越えます。 そんなに珍しいことではないということがわかると思います。
流産の原因を大きく分けると、胎児の要因と母体の要因とに分かれます。
しかし、ほとんどの流産は胎児の要因でおこります。 では, 胎児のなにが悪かったのでしょうか?
胎児の要因のほとんどが染色体異常です。 染色体異常をもつ受精卵の多くは、
発育を開始はするもののある程度以上は(その染色体異常の程度によってかわります)成長することができず、 やがて成長が止まります。 つまり、 死亡してしまいます。
死亡した胎児を子宮の中にとどめておくわけにはいかないため、 胎児が死亡すると出血が始まり、 子宮が収縮して胎児を子宮から押し出します。
これが流産です。 流産はある意味では染色体および遺伝子をいまのかたちで子孫に残そうという自然の選択作用だともいえます。これは防ぐことはできません。
2回以上流産を繰り返した場合には母体の問題が存在する可能性も考えられます。その原因は多岐にわたりますが7割近くが今の医学では原因不明です。 2回流産を繰り返して心配な女性、3回流産を繰り返したすべての女性は、習慣流産に関する専門外来のある病院で検査を受けることをお勧めします。(流産を2回以上連続して経験することを反復流産、2回以上連続して経験することを習慣流産といいます。) 漢方治療も大変有効な手段ですので紹介します。 |
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→女性の疾患へ |
流産の詳しい解説は「女性の疾患」の「習慣性流産」にあります。 |
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3−1.妊娠中の腹痛(漢方用語:妊娠腹痛) |
妊娠中の腹痛は、適切な処置を行わないと「胎動不安(切迫流産)」から「堕胎(流産)」や「子産(早産)」を引き起こすことになります。妊娠中の腹痛は、一般に気血の運行が十分でなくなり胞おが阻滞することによって発生します。
鑑別と治療
1.虚寒の妊娠腹痛 元来陽虚の体質の人が、妊娠数ヶ月で下腹部が冷えて痛み、温めるとやや軽減し、寒がる・四肢の冷え・腹満・食欲不振・舌質が淡・舌苔が薄白で滑・脈が弦あるいは細弱などをともなう。 治法は、散寒暖宮・通痺止痛で、艾附暖宮丸を用いる。 (注)宮とは胞宮ともいい、子宮のことです。 艾附暖宮丸:艾葉・香附子・呉茱萸・黄耆・続断・熟地黄・当帰・白芍・川きゅう・肉桂
2.風寒の妊娠腹痛 風寒の邪(風邪など)が腹中に入り、突然下腹部の冷え痛み・悪寒・発熱・頭痛・身体痛などをきたす。食欲減退・舌質は正常・舌苔は薄白・脈が滑で浮あるいは浮緊。 治法は、散寒止痛で、桂枝湯加艾葉・蘇梗・葱白を用いる。 桂枝湯加艾葉・蘇梗・葱白:桂枝・芍薬・大棗・生姜・甘草・艾葉・蘇梗・葱白
3.血虚の妊娠腹痛 元来血虚体質の人が、胎児を養うために血がさらに不足し、気の流通も同時に不足するために、「通ぜざればすなわち痛む」となって発生する。一般には妊娠5〜6ヶ月以降に下腹部の持続性鈍痛が生じ、頭のふらつき・目まい感・動悸・顔色が萎黄・舌質が淡紅・舌苔が薄白・脈が細弦滑などをともなう。 治法は、養血止痛で、膠艾湯または当帰芍薬散を用いる。 膠艾湯:艾葉・阿膠・熟地黄・当帰・川きゅう・白芍 当帰芍薬散:当帰・川きゅう・白芍・白朮・茯苓・沢瀉
4.気虚の妊娠腹痛 元来気虚体質の人が、中気不足となり血の運行が無力となり、血行が遅滞するために発生する。妊娠数ヶ月で間歇的な下腹部の鈍痛と下墜感が生じ、甚しければ1日に10数回発生し、心悸亢進・息ぎれ・少し動くと腹痛が生じ労働できない・舌質が淡・脈が滑で無力などを呈する。 治法は、益気止痛で、加味黄耆湯を用いる。 加味黄耆湯:黄耆・川きゅう・白芍・菟絲子・糯米・甘草
5.気滞の妊娠腹痛 妊娠後は胎児を養うために血が不足し、肝血も虚しやすい。肝血が虚すと肝気が鬱やすくなり、肝気鬱結から気滞が生じ、気滞のため血行が停滞して腹痛が発生する。下腹部の脹った痛み・胸苦しい・脇部が脹って痛むなどが生じ、いらいら・怒りっぽい・食欲不振・舌苔が薄白・脈が弦滑などを呈する。 治法は、養血調肝・理気止痛で、加味逍遥散加烏薬・香附子を用いる。 加味逍遥散:柴胡・白芍・当帰・白朮・茯苓・生姜・甘草・薄荷・牡丹皮・山梔子・烏薬・香附子
処方内容は下の5にもまとめて解説してあります。 |
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3−2.妊娠中の不正出血(漢方用語:胎漏) |
胎漏とは、妊娠の前半に持続性・間歇性の少量の性器出血がみられることを指します。出血が持続すると流産をきたすことがあります。胎漏の治療が流産防止のポイントになります。
【鑑別と治療】
1.気虚の胎漏 虚弱体質・脾胃虚弱・妊娠中の疾病などにより、気虚下陥が生じ、衝妊の固摂ができなくなり発生する。少量で暗色の性器出血や黄水の流出をともない、顔色が白い・元気がない・倦怠感・寒がる・息ぎれ・腰がだるい・腹が脹る・下腹部の下墜感・舌質が淡あるいは歯痕がある・舌苔が薄白・脈が滑などを呈する。 治法は、補中益気・昇陥安胎で、補中益気湯加阿膠・艾葉を用いる。 補中益気湯加阿膠・艾葉:黄耆・人参・白朮・甘草・当帰・陳皮・升麻・柴胡・大棗・生姜・阿膠・艾葉
2.血虚の胎漏 血虚の体質あるいは悪阻がつよくて脾胃が損傷し血の化源が不足するなどにより、血が不足して衝妊の固摂ができなくなり発生する。少量で淡色の性器出血が生じ、顔色が淡黄・頭のふらつき・目まい・動悸・眠りが浅い・便が硬い・舌質が淡紅・舌苔が薄黄あるいは無苔・脈は細数で滑などを呈する。 治法は、養血安胎で、膠艾湯を用いる。 膠艾湯:艾葉・阿膠・熟地黄・当帰・川きゅう・白芍
3.腎虚の胎漏 先天不足の虚弱体質で、腎気不足のため衝妊の固摂ができなくなり発生する。少量で淡色の性器出血が生じ、腰や背部のだるい痛み・下肢の無力感・頭のふらつき・耳鳴・頻尿・舌質が淡・舌苔が白滑・脈は滑あるいは沈弱・両尺脈が特に弱などを呈する。 治法は、補腎安胎で、加味寿胎飲を用いる。 加味寿胎飲:菟絲子・桑寄生・続断・阿膠・黄耆・白朮・蓮房炭
4.血熱の胎漏 陽盛の体質の婦人が、陰血が胎児を養うために不足し、陽気を抑制できなくなって陽亢を引き起こすことによって発生する。温熱病にかかって発生することも稀にある。鮮紅色の性器出血が生じ、顔面紅潮・口唇が赤い・焦躁感・不眠・便が硬い・尿が濃く少量・舌質が紅・舌苔が黄で乾燥・脈が数で滑などを呈する。 治法は、清熱養血・止漏安胎で、保陰煎加側柏葉を用いる。 肝鬱化火による血熱では加味逍遥散を用いる。 保陰煎:生地黄・熟地黄・白芍・山薬・続断・黄柏・甘草 加味逍遥散:柴胡・白芍・当帰・白朮・茯苓・生姜・甘草・薄荷・牡丹皮・山梔子・烏薬・香附子
5.虚熱の胎漏 腎陰虚で内熱が生じたために発生する。間歇的に性器出血がみられ、頭のふらつき・めまい・動悸・眠りが浅い・口や咽の乾燥・水分はあまり欲しない・両頬の紅潮・午後の熱感・手のひらのほてり・舌質が紅・無苔・脈が細数で両尺が特に細などを呈する。 治法は、滋陰清熱・止漏安胎で、阿膠地黄湯を用いる。 阿膠地黄湯:阿膠・生地黄・熟地黄・白芍・黄ごん・蓮房炭・旱蓮草・甘草
6.外傷の胎漏 外傷により損傷したために発生する。 治法は、扶気養血・止漏安胎で、聖癒湯合寿胎飲を用いる。 聖癒湯:黄耆・人参・熟地黄・当帰・川きゅう・白芍 寿胎飲:菟絲子・桑寄生・続断・阿膠
処方内容は下の5にもまとめて解説してあります。 |
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3−3.切迫流産(漢方用語:胎動不安) |
胎動不安とは、妊娠中に下腹部が下堕するように痛み、腰がだるくなり、少量の性器出血がみられることを指し、切迫流産に相当する。疼痛が増強し出血が増多すると、「堕胎〈流産)」「小産(早産)」「胎死腹中(胎児死亡)」などが発生するので、胎動不安はこれらの前兆としてとらえるべきであります。
【鑑別と治療】
1.気虚の胎動不安 虚弱体質・脾胃虚弱・妊娠中の疾病などによる消耗で、衝妊の固摂ができなくなり発生する。下腹部の下墜感・腹満・腰がだるい・少量でうすい淡色の性器出血あるいは黄水の流出などが生じ、顔色が白い・倦怠感・息ぎれ・物を言うのがおっくう・寒がる・舌質が淡・舌苔が薄白・脈が浮滑で無力あるいは沈弱などを呈する。 治法は補気安胎に益血を補助とし、挙元煎加味を用いる。 挙元煎:人参・黄耆・升麻・白朮・甘草
2.血虚の胎動不安 血虚体質や妊娠中の疾病などによる消耗で、血が不足して衝妊が十分充養されず発生する。腰がだるい・腹が脹る・下腹部の下墜感・性器出血などが生じ、顔色が萎黄・頭のふらつき・動悸・元気がない・無力感・皮膚に潤いがない・舌質が淡紅・舌苔が薄白あるいは無苔・脈が細数などを呈する。 治法は、益気養血・安胎で、安胎飲を用いる。 安胎飲:人参・白朮・熟地黄・当帰・白芍・川きゅう・陳皮・黄ごん・紫蘇葉・甘草
3.腎虚の胎動不安 先天的虚弱・頻回の早流産などのため、腎精が虚して衝妊不固となり発生する。下腹部の下墜感や脹った痛み・腰がだるく痛む・性器出血などが生じ,頭のふらつき・耳鳴り・両下肢の無力感・頻尿あるいは尿失禁・舌質が淡・舌苔が薄白・脈が沈細で無力などを呈する。 治法は、固摂安胎で、補腎安胎飲を用いる。 補腎安胎飲:人参・白朮・杜仲・狗脊・続断・阿膠・艾葉・菟絲子・補骨脂・益智仁
4.血熱の胎動不安 陽盛の体質の婦人が、陰血が胎児を養うために不足し、陽気を抑制できなくなって陽亢を引き起こし、熱が血海を擾乱して発生する。温熱病にかかって発生することも稀にある。突然鮮紅色の性器出血と腰がだるい・下腹部が下墜するような疼痛が生じ、口や咽の乾燥・冷たい飲物を欲する・尿が濃く少ない・便秘・舌質が紅・舌苔が薄黄で乾燥・脈が滑数で有力などを呈する。 治法は、清熱凉血で、保陰煎を用いる。 保陰煎:生地黄・熟地黄・白芍・黄ごん・山薬・続断・黄柏・甘草
5.気欝の胎動不安 妊娠中に怒りなどで肝気が鬱滞し、気滞のため発生する。腰がだるい・腹の持続性鈍痛・暗紅色の性器出血などが生じ、抑うつ感・いらいら・怒りっぼい・脇肋部が脹って痛む・曖気・少食・舌質が紅・舌苫が薄黄・脈が弦滑などを呈する。 治法は、疎肝理気・安胎で、順気飲子を用いる。 順気飲子:紫蘇葉・木香・人参・茯苓・大腹皮・糯米・苧根・草豆・甘草
処方内容は下の5にまとめて解説してあります。 |
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3−4.不育症、習慣性流産(漢方用語:滑胎) |
習慣性流産を漢方では滑胎と言い、「数堕胎」とも言われています。 流産に関しては2000年以上前の漢方の古典にも詳しく記載されている。《金匿要略》には「虚寒相博ち、これ名づけて革となす。婦人はすなわち半産漏下し、男子はすなわち亡血失精す」と記してあり、「半産」とは満期になる前に、胎気が充足せずに早産することで、「小産」に相当する。また《医宗金艦・婦人心法要訣》には「妊娠三、五、七か月、ゆえなくして胎自ずと堕し、下次に孕を受けるに至り、また復してかくのごとし。数々堕胎すれば、すなわちこれ滑胎という」と記してある。甚だしければ妊娠と流産をくりかえし、正常な出産ができなくなる。
【鑑別と治療】
1.腎気不固の滑胎 先天不足または後天的な原因による腎気不足のため、胞宮を滋養できず、胎気不固となって発生する。数回の流産の既往があり、妊娠後に腰や膝がだるく無力・下腹部の下墜感・めまい・耳鳴・頻尿あるいは尿失禁・性器出血・舌質は淡・脈は滑大で両尺脈が弱などを呈する。 治法は、補腎固胎で、千金保孕丸合寿胎飲を用いる。 千金保孕丸:杜仲・続断・山薬 寿 胎 飲:菟絲子・桑寄生・続断・阿膠
2.脾胃気虚の滑胎 脾胃気虚の体質で気血を生じることができず、胞宮を滋養できず、胎気不固となって発生する。数回の流産あるいは早産の既往があり、妊娠後に顔が黄色くむくむ・下腹部が脹って下墜感がある・倦怠無力感・息切れ・物を言うのがおっくう・味がない・食欲不振・泥状〜水様便・舌質は淡紅・舌苔は薄白・脈は緩などを呈する。 治法は、補脾益気・固胎で、補中益気湯加味を用いる。 補中益気湯:黄耆・人参・白朮・甘草・当帰・陳皮・升麻・柴胡・大棗・生姜
3.陰虚火旺の滑胎 内傷七情で肝鬱化火したり過労のため腎陰が消耗し、陰虚火旺となり胎気を動かすことにより発生する。数回の流産の既往があり、妊娠後に痩せる・両頬部の紅潮・五心煩熱・ロ乾・水分を欲する・腰がだるく痛む・性器出血・舌質は紅・舌苔は少ない・脈は滑数または尺脈が虚大などを呈する。 治法は、滋陰降火・固胎で、保飲煎を用いる。 保 陰 煎:生地黄・熟地黄・白芍・黄ごん・山薬・続断・黄柏・甘草
4.気虚寒凝の滑胎 気血両虚の体質の婦人が風寒を感受し、寒邪が胞宮に停滞したために発生する。数回の流産の既往があり,妊娠後に下腹部が冷えて痛む・四肢の冷え・寒がる・温暖を好む・腰や膝がだるく無力・泥状小水様便・尿量が多い・舌質は淡・舌苔は薄白で滑潤・脈は沈遅で無力などを呈する。 治法は、補気温経・固胎で、聖癒湯合寿胎丸を用いる。 順気飲子:紫蘇葉・木香・人参・茯苓・大腹皮・糯米・苧根・草豆・甘草 |
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3−5.1〜4の処方内容 |
艾附暖宮丸:艾葉・香附子・呉茱萸・黄耆・続断・熟地黄・当帰・白芍・川きゅう・肉桂
桂 枝 湯:桂枝・芍薬・大棗・生姜・甘草
膠艾湯:艾葉・阿膠・熟地黄・当帰・川きゅう・白芍
当帰芍薬散:当帰・川きゅう・白芍・白朮・茯苓・沢瀉
加味黄耆湯:黄耆・川きゅう・白芍・菟絲子・糯米・甘草
加味逍遥散:柴胡・白芍・当帰・白朮・茯苓・生姜・甘草・薄荷・牡丹皮・山梔子
補中益気湯:黄耆・人参・白朮・甘草・当帰・陳皮・升麻・柴胡・大棗・生姜
加味寿胎飲:菟絲子・桑寄生・続断・阿膠・黄耆・白朮・蓮房炭
千金保孕丸:杜仲・続断・山薬
寿 胎 飲:菟絲子・桑寄生・続断・阿膠
聖 癒 湯:黄耆・人参・熟地黄・当帰・川きゅう・白芍
阿膠地黄湯:阿膠・生地黄・熟地黄・白芍・黄ごん・蓮房炭・旱蓮草・甘草
挙 元 煎:人参・黄耆・升麻・白朮・甘草
安 胎 飲:人参・白朮・熟地黄・当帰・白芍・川きゅう・陳皮・黄ごん・紫蘇葉・甘草
補腎安胎飲:人参・白朮・杜仲・狗脊・続断・阿膠・艾葉・菟絲子・補骨脂・益智仁
保 陰 煎:生地黄・熟地黄・白芍・黄ごん・山薬・続断・黄柏・甘草
順気飲子:紫蘇葉・木香・人参・茯苓・大腹皮・糯米・苧根・草豆・甘草 |
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◇妊娠したら始めましょう!保胎・養胎を |
保胎とは、妊婦が平素より虚弱であったり、過去に2回以上流産を繰り返した場合、または不妊歴が2年以上の場合に流産を予防しながら胎児の健全な発育を得るための漢方治療です。 養胎とは、妊娠後胎児の発育が緩慢な場合、胎児の成長発育を促し流産を予防し、健全な新生児を得る漢方治療です。 妊娠はスタートです。不妊治療でめでたく妊娠したら、出産のゴールをめざし、妊娠5〜6ヶ月の安定期まで保胎のための漢方治療を続けましょう。
1.保胎
保胎飲:人参・白朮・茯苓・当帰・白芍・阿膠・黄ごん・菟絲子・桑寄生 続断・杜仲・甘草・縮砂・香附子
寿胎飲:菟絲子・桑寄生・続断・阿膠
2.養胎
四君子湯合千金保孕丸:人参・白朮・茯苓・杜仲・山薬・続断・桑寄生 熟地黄・陳皮・甘草・縮砂
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